コロナ禍の真っ只中の頃、僕はキッチンカー「小山のきそば号」を通じて飲食業界に関わる機会を得た。そこで見えたのは、外から見ていた飲食業界と、実際に現場で動いている飲食業界の大きな違いだった。

SNSでは飲食は華やかに映る

・料理へのこだわり ・人との繋がり ・空間演出 ・夢 ・情熱

もちろん それらは間違いなく存在する。

が!! 飲食はあくまで「商売」なのである。

ここを考えないと どれだけ想いがあっても経営は苦しくなる。

・美味しいだけでは続かない ・接客が良いだけでも続かない ・オシャレなだけでも成立しない

誰に、何を、どんな価値として届けるのか。そこが明確でなければ物価及び人件費が高騰している現在、飲食業界で生き残る事は非常に困難となる。

実際に飲食業界を見ていて驚いたのは、この「誰に届けるのか」が曖昧なまま営業しているケースが本当に多かったことだ。

・高級路線なのか ・大衆向けなのか ・回転率を重視するのか ・居心地を売りたいのか

そこが決まっていないからどんどんブレる! 接客、発信が自分目線のまま 最後は気合いと根性で何とかしようとするのだ。

これは僕の本業でもずっと感じてきたことだ。ペルソナ設計が曖昧な商売ほど、現場の負担が増える。逆に、誰に届けるのかが明確なブランドほど、やるべきことが研ぎ澄まされていく。

「小山のきそば号」が今でも人気がある理由は、単純な飲食の成功だとは僕は全く思っていない!

そもそも僕の本業はプロモーション、マーケティング会社だ。僕はその中でもコンサルティングを軸に行ってきた自負がある。

「何を売るか」よりも「誰に届けるのか」 なぜ人が反応をするのか。なぜ記憶に残ってもらえるのか? ココを最初から考えていた。

プロなので当然だが、この視点があったからこそ、中沢製麺とのコラボが成立したと思っている。もちろんこの事は中澤社長が一番理解してくれていると確信している。

単なる「製麺会社との協業」ではないのである

そこにあったのは、歴史、地域性、ノスタルジー、体験価値、ストーリー そういった「目に見えない価値」の設計なのだ!

特に強かったのが「小山駅の立ち食いそば」という存在そのものだ。 立ち食いそばは、ただの食事ではない。

通勤、通学、部活帰り、旅行、待ち時間・・・ 人それぞれの人生の記憶に入り込んでいる

つまり小山駅のきそばは「食べ物」である前に「思い出」なのだ さらに僕はキッチンカーに「電車」というモチーフを取り入れた

駅、ホーム、列車、移動 立ち食いそば文化と電車は切り離せないからだ

だからこそ「小山のきそば号」という存在は実際に駅から離れてもしっかりと「小山駅ホーム」の情景が浮かぶのだ

懐かしさ、匂い、音、空気感 人はその記憶込みで価値を感じているはずだ

僕はこれこそ究極の食材だと思っている

原材料だけではない 歴史や記憶そのものが既に価値になっている

そして実際にやってみて改めて強く感じたことがある

人がおいしいと感じる理由は 原材料や料理の腕だけでは決まらないということだ!

・誰と食べるのか ・どこで食べるのか ・どんな空気の中で食べるのか

実はそちらの影響の方が大きいと心から感じている

同じそばでもイベント会場で食べる一杯と、無機質な場所で食べる一杯では、体験がまるで違う。

飲食とは 料理提供ではなく「体験提供」なのだ だからイベントとの相性も良かった

立ち食いそばは気軽に食べられる 回転率も良い 価格の心理的ハードルも低い

イベントに必要なのは「おいしい×たのしい」に尽きる。 その意味で「きそば」は非常に強いコンテンツだった。

そして ココが一番のポイントだ! 僕たちは4年間今でも「演出」に手を抜かない

小山のきそば号の世界観 見せ方、発信、言葉選び(運行、停車、発車など) そして空気感だ

4年間、プロとしてプロモーションをし続けた 誰に何を言われようと忙しいを理由に妥協する事だけはしなかった

コラボである以上、僕だけの問題では無いからだ! 単発でバズらせるのではなく「文化として浸透させる」ことを目的にやり続けた。

だから「ただのキッチンカー」ではなく 「小山のきそば号」という存在そのものが認知されていった。

街を通る子供たちが「あ!小山のきそば号だ」と言ってくれるようになった。(これは本当にうれしい)

僕の得意とする「ブランド構築」を目的としたマーケティング手法だ。時間と手間が掛かるが達成感は半端ないのである。

そして飲食業界に実際に関わって、もう一つ見えてきたことがある。それは飲食業界が過酷になりやすい理由だ。その背景には、「承認欲求が即時で返ってくる」という構造があると今現在僕は思っている。

料理を出せば、目の前で反応が返ってくる。

美味しいと言われる。 ありがとうと言われる。 笑顔になる。

これは本当に嬉しい。 (マジで疲れが吹っ飛びます)

だから人は「もっと喜ばせたい」と思うのだ!

もっとサービスしよう。 もっと頑張ろう。 もっと無理をしよう。

だが その感情だけで走り始めると利益や継続性が後回しになっていく。 (これは僕の今の課題だ・・・)

本来、商売には線引きが必要だ。 どこまでを価値提供とするのか。 どこからは無理になるのか。

そこを設計しないまま情熱だけで走ると、現場が壊れていく。逆に、長く続く店ほど、「感情」と「経営」のバランスが上手い。

今回「小山のきそば号」を通じて僕が感じたのは、飲食とは単なる料理勝負ではないということだった。

人は料理だけを食べているわけではない。

・背景を食べている ・記憶を食べている ・空気を食べている

だからこそ飲食は面白い。 そして同時に、マーケティングが圧倒的に重要になるのだと思う。 この記事に関連する内容を現在執筆中です。

吉田英樹